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NO.1956(2009年10月12日号)
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YKK APの吉田社長が所信
上期国内15%減収・営業損60億
事業構造改革加速、追加施策も検討
YKK APの吉田忠裕社長は9月25日、軽金属記者クラブ加盟4社と会見。「新中計」による事業構造改革初年度は、予想以上のマーケットの落ち込みから「国内の上半期営業損益は60億円の赤字になる」ため、新たな施策を実施する考えを 明らかにした。
海外は全社黒字、10億円超
今年3月に発表した2009〜12年度の「第3次中期経営計画」では、売上が減っても利益の出る体制を作るというかけ声と、それをサポートする技術力の強化という2点をテーマにしているが、09年度第1四半期は営業損益ベースで42億円という大変な額の赤字となった。
国内のマーケットは我々が予測していた以上に悪化した。第2四半期も第1四半期の赤字をカバーすべくいろいろ努力した。しかし、現時点では17億〜18億円の赤字となり、上期は60億円近い赤字となり、売上高も前年同期比15%近い落ち込みとなる。
今年度の新設住宅着工戸数は当初、90数万戸を予測していたが「今はそれはない、全然違うぞ」という見方だ。年換算すると70万戸台という話にはならないだろうと思うが、今の状況は本当に悪い。このため、製造拠点の34ヵ所から24ヵ所への削減や「窓」事業の基盤確立など、既に計画している事業構造改革のスピードアップを図るのに加え、それだけでは足りないので、「さらに何を、どうメスを入れるか」という新たな施策を検討している最中で、10月中旬までにはまとまる。
一方、7ヵ国で展開している海外建材事業は大きな額ではなく、バラツキもあるが、全部が営業黒字である。今年度は海外部門の収益は最低でも10億円にはなる見込み。
第3四半期(9〜12月期)は本来マーケットの需要期で、上期での売上・利益の落ち込み分を取り戻す時期だが、実現はマーケットがどんどん悪くなっている状態をどこまで見越して対策がとれるかで、あまり楽観的なことはいえない。通期では海外の売上を含めたAPグループ連結で営業損益が収支トントンに持っていければ良いと思っている。
新規投資再検討、埼玉工場は着工先送りも
新たな投資は予定通り進めて良いのか、再検討している。例えば、埼玉県の首都圏工場は09年末年末に造成が終わったら譲渡を受けるという予定に変更はない。しかし、2010年の年初から着工して11年4月から操業するという当初の計画は「直ぐに工場を作るという状況ではないため」、少し遅れる可能性がある。埼玉県知事にもお会いして申し上げ、理解していただいた。建設中止ということはなく、半年や1年遅らせる考えは全くな。
正社員の削減は考えず、押出機は休止で対応
また、事業構造改革・リストラというと、直ぐに人を減らすという話になるが、基本的に自然減や契約社員の契約を更改しないということで対応、社員の人員削減は考えていない。YKK APグループで期初1万4,000人近くいた人員はこの上期で600人近く減っており、さらに年度末までに約300人減る見込みだが、正社員は一部自然減だけで意図的な整理は考えていない。
現在、東北、黒部、四国、九州の4ヵ所に押出素材の基幹工場があるが、その4工場の再編はしない。中期計画の中ではより生産性の高い押出機にリプレースする計画を盛り込んでいるが、余剰設備の廃棄は考えていない。樹脂製の窓事業を始めていることもあり、中期的にはアルミ押出重量は減っていくのは間違いないが、需要が底を打って戻りに転じる時期を見極めるのは困難なため、実情に応じて休止していく。
温室効果ガス25%削減は追い風
鳩山首相の民主党政権誕生により追い風が吹いている。2020年までに1990年比で温室効果ガスの排出量を25%削減するという、もの凄く高いハードルを設定した。この目標達成には窓という住宅の開口部が非常に重要。断熱性能の高い窓に全部替えないと、実現しない。
ただ、一般の消費者に「これだけ投じれば窓はこう変って、これだけCO2の排出・エネギーコストの低減につながりますよ」という「ビフォア・アフター」がきちんと提示できるかどうか大事。 TDY3社で取り組んでいる「グリーンリモデル」事業は11月から、住宅のガス・電気の消費量やCO2排出量などの環境性能を診断するためのシステムである。「グリーンリモデル診断」を本格スタートさせる。エコカーに対する減税措置など自動車業界、家電業界にはそれなりの支援措置があるが、住宅産業ではそれが見えてこない。このため、減税も含めて、住宅のCO2削減をアピールする制度を再度、強力に要請する必要があろう。
さらに、製造メーカーとして合理化・コストダウンによりアピールする商品をつくる一方、販売チャネルや業界全体の構造を経費が掛からないように改革することで最終製品がリーズナブルな値段にならないといけない。
新規事業は「窓」と「APファサード」
今年度から非建材分野を対象にした「産業製品事業部」を新設したが、「マテリアル事業」という一つの柱としてやるというスタンスで始めたわけではく、それほど力を入れていない。サッシとファスナーがYKKグループの事業の両輪。この両輪が大変なので沈まないように一生懸命やっている。新たな事業を展開するとしたら「AP」及び「ファスニング」の中で新しいものをやっていくことで、APの事業の中では住宅用で窓事業、ビル用ではAPファサード事業が大きな分野である。
パイロテック・ジャパン
特殊渦巻き流技術で攻勢
軽量スクラップの高効率溶解装置
アルミ溶湯処理機器のパイロテック・ジャパン(神戸市中央区、大野嘉一社長、電話078-265-5590)は軽量アルミスクラップ溶解装置「ロータスシステム(LOTUSS System)」の国内向け本格発売に乗り出した。加工屑、切削屑、切粉、ダライ粉、UBCなどの溶解を高効率におこない、溶湯品質アップにもつながる。独自開発の特殊な構造によりスクラップを溶湯の渦巻き中に巻き込んで溶かす仕組みのため、インペラー(羽根)回転や電磁誘導撹拌に比べ設備の初期投資額が少なく、メンテナンス費も安いことも特徴。同社のこれまでのノウハウを駆使し、「溶解速度の向上、溶解時の酸化防止、溶湯の浄化」を達成している。
米国を筆頭に海外で販売を伸ばしており、これまでに100台以上の納入実績がある。業種別内訳は二次合金メーカー35台、軽圧メーカー25台、自動車メーカーなどファンドリー43台(北米の日系自動車メーカーとホイールメーカーを含む)。日本では自動車メーカー向けアルミ二次合金の溶湯供給会社に設置、順調な操業が続いている。こうした実績を踏まえ、国内の鋳造、圧延メーカー向け拡販を狙う。
「ロータスシステム」を導入したのは総合リサイクル企業のスズムラ(愛知県豊田市新生町、鈴村隆広社長)。04年から本社工場でアルミ二次合金の溶湯供給を始め、08年2月には需要増に対応するため三好工場(愛知県西加茂郡三好町大字福谷字上知念古61)を新設した。現在、近隣の自動車メーカー工場向けにハイブリッド車エンジン部品用のアルミ二次合金を溶湯供給している。
三好工場は溶解からポット(搬送取鍋)まで溶湯が極力空気に触れないように工夫することで酸化を抑え、溶湯品質を向上させている。本社工場では溶解用に低周波誘導炉を設置したが、三好工場では「歩留り改善・処理量増対応・省エネ化」など、軽量スクラップの高効率溶解を狙って、「ロータスシステム」を導入した。その結果、生産効率や溶湯品質が大きく改善、エネルギーコストだけでも低周波誘導炉と比較して10分の1程度に削減されたという。
「ロータスシステム」は25d溶解炉のサイドウェルに設置。強制循環の機能を持つ循環ポンプ
と低乱流の渦巻きを発生させるロータス槽(内径は76cm)で構成される。溶解炉内のアルミ溶湯は循環ポンプを通ってロータス槽に流入し、さらにロータス槽の特殊な形状により下方に向って低乱流の渦巻きが発生。これにより軽量スクラップがアルミ溶湯中に迅速に沈み込んで溶解される。同時にパイロテック社製フラックス「カバラル18S」を投入することで溶湯の表面張力を緩和、スクラップが渦の中に巻き込まれやすくするとともに、ドロスに含まれるアルミ分の分離を促進し、その溶融フラックスで軽量スクラップ表面を被覆することで酸化を防ぎ、より歩留りを上げる仕組みとなっている。
原料スクラップのダライ粉は隣接するホッパーからシューターを通してロータス槽に連続的に投入される。材料投入量は最大4.5d/時だが、現状は1d/時の溶解量。溶湯は30d保持炉を経て、搬送用取鍋に移した後、同社製GBFシステムによる脱ガス処理を施してから自動車メーカーの工場にトラックで搬送される。生産が需要に追い付かない人気車種向けだけに、工場は2直の24時間フル操業体制にある。
8月の圧延品出荷、18.7%減
板類は缶材の20%減が影響
日本アルミニウム協会が発表した8月のアルミ圧延品生産・出荷統計によると、板類は生産が8万5,172d(前年同月比17.0%減)、出荷が8万5,389d(同17.8%減)となった。ともにマイナスは11ヵ月連続。ただ、2月を底に縮小基調にあった出荷の減少幅は7月の17.2%減から若干拡大。前月比でも18.7%減と6ヵ月ぶりにマイナスとなった。自動車向けが前年同月比22.1%減と5月48.2%減、6月37.2%減、7月30.4%減とマイナス幅が縮小したほか、電気機器向け、輸出などは改善傾向にある。一方、堅調であった缶材が天候不順の影響で前年同月比20.0%減と大幅に落ち込んだことが響いた。
押出類は生産が5万4,058d(同20.1%減)、出荷が5万3,531d(同20.1%減)。ともに31ヵ月連続のマイナス。しかし、建材が13.5%減(7月は15.5%減)、自動車が32.3%減(同35.7%減)と徐々に改善しており、減少幅は6月25.7%、7月23.6%減に比べ縮小傾向にある。
板類と押出類の合計では生産が13万9,230d(同18.2%減)、出荷が13万8,920d(同18.7%減)で、ともに11ヵ月連続のマイナスだが、マイナス幅は6月21.6%。7月19.7%に比べ縮小傾向にある。
コンデンサー用箔、減少幅拡大
箔は生産が8,859d(同11.1%減)、出荷が8,528d(同19.1%減)で、ともに11ヵ月連続で前年同月実績を下回った。出荷のマイナス幅は7月の15.6%に比べ拡大したが、コンデンサー用箔の出荷が2,913d(同23.0%減)と、4月1,966d(同43.0%減)、5月2,178d(同35.8%減)、6月3,145d(同15.0%減)、7月3,528d(同11.6%減)に比べ大きく減少したことが響いた。
アルミ協会正副会長が景況感
「8月の落ち込みは一時的減少」
日本アルミニウム協会が開催した9月28日の定例記者会見の席上、高橋徹会長(神鋼アルミ・銅カンパニープレジデント=写真)をはじめ、石山喬(日本軽金属社長)、吉原美英(住軽アルミ箔社長)の両副会長は足元の需要動向及び今後の見通しについてそれぞれ、以下のとおり見解を述べた。
高橋徹会長 8月は少し足踏みした分野と、緩やかに回復している分野とに分かれているが、主力の缶材の出荷が少しブレーキがかかった。ただ、在庫が増えているというわけではないため、期待値としては天候の回復なども含めて、もう少し持ち直すのではないかと予測している。
最も落ち込みの大きかった自動車関連も堅調に戻ってきている。さらに、半導体製造装置、液晶などパネル製造装置用などを含めた厚板関係が下期にかけて少しずつ増えてきそうなど、板類は堅調な回復をたどっているのではないか。
押出類もマイナス傾向が続いている中で、希望的観測かもしれないが、建築分野が若干戻っているかなという感じがあり、自動車も回復している。また、電解箔は一時的な落ち込みであると判断している。従って、いろいろ跛行段階があるものの、総じて見ると、下期にはほぼ80%程度にまで需要が戻るという当初の予測シナリオ通りに進んでいると見ている。
4〜8月の出荷量は46.6万dで、9月が8万d程度になれば上期は約55万dとなる。下期は月8万dが続けば50万d程度となり、年間では予想の106万dに近付こう。
押出類も今のままで推移したら73.4万dという当初の予測数字に行きそうで、総じて8割の水準にまで回復という数字はほぼ見えたのではないか。
石山喬副会長 戸建住宅はまあまあの水準で推移しているが、分譲マンションの着工が前年同月比71.9%減と大幅に落ち込んでおり、今後どうなるかが、押出類の出荷で一番懸念される。
吉原美英副会長 8月はコンデンサー用箔の出荷が大きく落ち込んだが、前半にユーザーが在庫をかなり絞り込んだ結果、出荷が増えたことの揺り戻しと見ている。9月の出荷も若干弱いと予測しているが、このまま悪い状態が続くとは見ていない。
軽金属学会7賞決まる
小山田記念賞は住軽日軽エンジに
軽金属学会はこのほど、「軽金属学会7賞」の受賞者を決定した。「小山田記念賞」には住軽日軽エンジニアリングの「アルミ耐震補強工法の開発と実用化」が選ばれた。また、今回、「軽金属女性未来賞」の第1回受賞者も表彰される。表彰式は11月14日、電気通信大学で開催される軽金属学会第117回秋期大会総会の席上で行われる。各賞の内容は次の通り。
【第44回小山田記念賞】アルミ耐震補強工法の開発と実用化(住軽日軽エンジニアリング・檜山裕二郎/大久保昌治)【第32回高橋記念賞】住友軽金属工業・朝原仁▽デンソー・安達武一▽九州三井アルミニウム工業・小宮博樹▽住友化学・弓山和久【第27回軽金属奨励賞】京都大学・足立大樹「P/Mアルミニウム合金の微細組織制御による機械的性質向上に関する研究」▽三菱アルミニウム・岩尾祥平「熱交換器用アルミニウム合金材料の腐食・防食に関する研究開発」▽長岡技術科学大学・本間智之「軽金属材料のナノ構造-特性関係の解析」【第8回軽金属躍進賞】大阪大学・宇都宮裕▽日本大学・久保田正広▽山梨大学・中山栄浩【第1回軽金属女性未来賞】東北大学・鈴木真由美▽三菱アルミニウム・鳥居麗子【平成21年度軽金属論文賞】「Effect of Precipitation on development of Recrystallization texture in a 6061 Aluminum Alloy」(和歌山工業高等専門学校・樫原恵蔵/INATEX・稲垣裕輔▽「ピーク時効した多結晶Al-Mg-Si合金の粒界破断に対する結晶粒方位の影響」(富山大学・松田健二/築山淳次/池野進/富山県立大学・上谷保裕)▽「2軸応力試験によるアルミニウム飲料缶の変形および破断強度の異方性の測定」(東京農工大学・桑原利彦/井上裕之(現ブリヂストン)/三菱マテリアル・花房泰裕/瀧澤英男/ユニバーサル製缶・伊藤隆一)【同軽金属論文新人賞】「実用6000系アルミニウム合金中のマグネシウムとけい素の完全固溶温度」(関西大学大学院(現神戸製鋼所)・中村貴彦)▽「Mechanical Properties of Newly Developed Age Hardenable Mg-3.2mol%Gd-0.5mol%Zn Casting Alloy」(IHI・尾崎智道)▽「自動車熱交換器用犠牲陽極フィン材の強度および耐食性に及ぼすSi、Cu添加の影響」(三菱アルミニウム・吉野路英)。
東京電通大で軽金属学会秋期大会
講演発表162件、11月14日〜15日
軽金属学会は11月14日〜15日、東京電気通信大学(東京都調布市)において第117回秋期大会を開催する。当日は定時総会・表彰式のほか、講演発表162件、ポスターセッション63件、小山田記念賞受賞講演や市民フォーラム「最新観測技術における軽金属の役割と星惑星系形成の最前線」(国立天文台ALMA推進室助教齋藤正雄)も行われる。
なお、講演発表162件のテーマ別内訳は、▽溶解・凝固・鋳造:12件▽組織制御:20件▽変形および塑性加工プロセス:17件▽腐食&表面改質:18件▽形状付与加工:20件▽力学特性:12件▽複合材料・発泡材料:12件▽マグネシウム:25件▽チタン:12件▽分析・測定:3件▽テーマセッション1「スカンジウム添加軽合金の魅力と将来展望〜基礎から応用まで〜」:7件▽テーマセッション2「押出加工の諸問題と将来」:4件。
中国・広州に機械加工の第2工場
鋳造機も6台増設、アーレスティ
アーレスティ(高橋新社長)は9月29日、100%子会社である広州阿雷斯提汽車配件有限公司(広州アーレスティ、広東省広州経済技術開発区永和経済区、代表者・石丸博氏)がさらなる受注増に対応するため建設を進めてきたダイカスト製品のマシニング加工専門の第2工場が竣工、11月に生産を開始すると発表した。
広州アーレスティは自動車メーカー並びに自動車部品メーカーの進出と生産量の拡大に伴うダイカスト需要の増大を受け、工場建屋の増築および設備の拡充を進めてきた。しかし、現行の第1工場の敷地(4万3,000u)が建築限度一杯になったため、同じく永和地区内で広州アーレスティから車で10分程度の場所に新たに敷地面積1万7,691uの土地を取得、第2工場を建設した。建屋面積は6,193u。ダイカスト製品の機械加工を行う。投資額は土地・建物合わせて約3億2,000万円。第2工場の建設に伴い、現在広州アーレスティの敷地内にある金型製作の阿雷斯提精密模具(広州)有限公司も永和地区内に移転する。敷地面積は8,750uで、2010年3〜4月に竣工の予定。
広州アーレスティ第1工場の現有ダイカストマシンは2500d4台、1650d2台、800d6台、650d5台の計17台で、月産能力は約1,000d。今後、中国での新規顧客獲得と自動車生産拡大に対応して設備の増強を進める計画で、2010年3月までに800d3台、さらに来年中に800d、1,650d、2,250d各1台の計3台を国内各工場から移設する。09年6月時点で、広州アーレスティ単体の売上高は09年度43億円、2010年度に80億円、11年度に120億円を見込んでいる。
MB「アルミカンファレンス」
丸紅・軽金属部の概要報告
Metal Bulletin誌は9月14〜16日、ドイツ・デュッセルドルフで「アルミカンファレンス2009」を開催したが、丸紅・軽金属部は会議の概要を以下のようにまとめた。
【総括】
全体のセンチメントは、底を打った後の穏やかな回復への期待感から、どちらかといえば楽観的だが、先行きに対する見方は非常に不透明感が強い。需要の回復が期待される一方で、LME価格上昇に伴う生産再開および中東を中心とした新規製錬所の立ち上げも相次ぐ見通しのため、2010年も需給バランスは供給過多が継続する。そうした中で、多くの参加者がfinancial dealが現物市場に与える影響は大きいと指摘。2010年以降もそうした動きは継続すると見られており、LME在庫量とLME価格の連動性は失われるだろうとの見方が大勢を占めた。
LME相場見通しは、下落リスクは限定的で、1700〜2200jを中心レンジとして推移するとの見方が支配的。下値は1600、上値は2500jの予測があった。日本向けプレミアムは足元115〜125j/dから2010年には80〜100jを予想。
【Financiall Deal】
LME在庫は9月16日に462.9万dと史上最高水準を更新した。ここ数ヵ月、一見するとLME在庫の増加スピードは緩和しているが、実態はLME指定倉庫外での在庫積み上げに移行しているのが現状。そうした動きは2010年も継続するとの見方が多数。現在、LME指定倉庫外の在庫量は150万〜200万dあると見られており、LME在庫と合わせると600万d超の水準。
本来であればこれが余剰玉として市中に出回るが、Financiall Dealにより市場には流入せず、各地でのrestockingの動きとも相まって、現物プレミアムの高止まりという弊害を懸念する声が大であった。
【需要:最悪期を脱し、緩やかなプラス成長へ】 需要家・生産者・トレーダーはいずれも最悪期は脱したと判断。一方で、V字型回復はないと見ており、各国政府による景気刺激策がもたらしたrestockingがによる一時的な需要の戻りに過ぎないと見る向きが多数。従って、現在の世界各地でのプレミアム高騰は行き過ぎと見ている。
中国を筆頭としたアジア諸国やブラジルなどの途上国の需要は旺盛で、2010年以降も強い成長を期待。一方、欧州や米国、日本などの需要については一様に懐疑的で、全般的には緩やかに回復するというシナリオが多数を占めた。
【供給:生産再開・供給リスク】
LME相場の上昇に伴い、生産再開や中東を中心とした新規製錬所の立ち上げが相次ぐと見られるものの、エネルギーコストの上昇が生産者の収益圧迫に大きな影響を与えるため、供給リスクは常につきまとう。中長期的な相場予測ではエネルギーコストの上昇による供給リスクを相場上昇要因と見る向きがいた。
【投機資金動向】
足元の各国中央銀行の過剰流動策によるインフレ懸念およびドル安進行から、インフレヘッジのためコモディティ全般への投機が予想される。特に、低金利での資金調達が可能な金融機関によってコモディティに対する過剰な投機が行われる可能性が非常に高い。
アルミ独自の材料としては、ファンダメンタルズ面での単純な需給バランスだけでは投機筋の買いを呼び込むほどではないが、financial dealの対象を除いた現物市場の需給バランスを見ると、投機筋の買いを呼び込む可能性は十分に考えられる。また、短期筋のファンドに加えて、中長期型の年金系ファンドなどが商品Indexなどを通じてコモディティ全般の買い手になることでアルミも中期的に上昇するとの予測もあった。
【中国動向】
足元の生産レベルは年産ベースで1400万dレベルにまで回復し、年末には1700万dに達するとの見方があった。中国の需要が戻ったとしても生産再開により国内が供給過多となる可能性が大。しかし、マーケットに与える影響は不透明で読めないとする参加者が多数。需要に関しては政府による景気刺激策により大幅に回復しているものの、この傾向がいつまで続くのか懐疑的な見方もうかがわれた。
経産省、日本アルミに産業再生法
事業統括と製造の3会社新設分割
経済産業省は9月25日、日本アルミ(可知隆志社長)が提出した「事業再構築計画」を「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」(産業再生法)の適用対象として認定した。
計画では、旧日本アルミの会社分割により、アルミ加工品事業統括会社の新日本アルミ、製造会社の鞄本アルミ滋賀製造所と鞄本アルミ安城製造所を新設する。新日本アルミがアルミ加工品事業の統括・設計・営業を行い、日本アルミ滋賀製造所では工業製品事業、日本アルミ安城製造所では建材製品事業と、役割を明確にした効率的な生産体制を確立。営業・技術情報の共有化、人材の効率的な配置などによりグループ力を強化する。不採算部門である生活用品事業などは縮小。これにより、生産性の向上を目指す。
今回の認定により、会社の分割に伴う登録免許税の軽減措置を受けることが可能になる。
事業計画の実施期間は09年10月から12年9月まで。生産性の向上では12年度に08年度に比べROE(自己資本当期純利益率)を154.1ポイントアップを狙う。
8月の二次合金出荷、34.5%減
日本アルミニウム合金協会が発表した8月のアルミ二次地金・同合金地金需給統計によると、生産は5万2,912d、前年同月比35.6%減、出荷は5万4,486d、同34.5%減となった。
マイナスは生産が15ヵ月、出荷が13ヵ月連続。ただ、生産の減少幅は7月の35.1%に比べ、若干ながら6ヵ月ぶりに拡大。一方、出荷の減少幅は7月の36.4%から2ヵ月ぶりに縮小した。
図・表・写真は本誌でご覧ください。
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