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NO.1987(2010年5月31日号)

志津YKK AP副社長が海外事業で見解
09年度売上高450億円、営業益15億円
「現地に根付き、現地で商売」が基本

YKK AP(吉田忠裕社長)は中長期の経営方針として国内は構造改革で窓事業・リフォーム事業の強化、海外事業は既存拠点の強化・拡張と新拠点の設置を掲げている。そこで海外事業を担当する志津正美副社長に現況と今後の方針を聞いた。

7ヵ国・地域の現況
 YKK APは現在、米国、ブラジル、台湾、インドネシア、シンガポール、香港、中国の7ヵ国・地域で海外事業を展開している。
 米国はリーマンショックで大きな影響を受け、アルミ建材事業の09年売上高はピーク比4割減となったが、販売地域は37州をテリトリーにしており、しっかりとしたビジネスモデルが確立している。メーンは商業施設向けバー材の外販で、一部完成品を提供する。一方、戸建て住宅向けのPVC(樹脂系)サッシはガラス入り完成品としてディストリビューターに供給している。まだ事業といえるレベルではないものの、昨年後半から受注が前年を大きく上回るなど堅調で、今後が非常に楽しみである。米国は押出機が3基あるが、生産キャパにはかなり余裕があり、4基目の増設予定は今のところない。
 米大陸ではブラジルで建材事業を本格化した。以前から進出していたが、09年にファスニングのYKKブラジル社の建材部門であるAP事業として認知した。サンパウロを中心に高級の集合住宅向けに請負方式で、アルミ形材をローカルのメーカーから購入して製品化し、最後の施工までやるというビジネスモデルで展開している。ただ施工関係の人間を配置しないと品質を保てないため、受注をお断りするような場合もある。サンパウロ以外の地域でのマーケットにどう対応していくかが課題である。
 台湾も、「超高級の集合住宅」に絞って商売しており、極めて順調な成績を上げている。YKK台湾社のAP事業部として展開しているが、親日的ということもあって、「YKK APブランド」は高く評価されており、ある種の価格競争には巻き込まれないで済んでいる。形材はYKK APインドネシア社から調達しており、ブラジル同様、施工込みで行っている。
 インドネシアは高級住宅の販売が好調で、押出から加工まで手がけている。太陽光発電用枠材や、トラックのカーゴボックスなど、インドネシア国内と日本向けに産業用形材も供給。ファサード事業のCWの加工も一部インドネシアで行っている。押出機は4基あったが、1基廃棄して3基体制となっているが、フル生産にはなっていない。
 また、ファサード事業の本拠はシンガポールに置く。現地の物件を追いかける部隊と香港にも営業部隊がいる。香港はかつて高層ビル向けも手がけていたが、ローコストの資本がドンドン参入して商売にならなくなっており、シンガポールと同じように大型のCWに特化した。
 中国は大連、上海、深、蘇州の4つに拠点を持っている。大連は押出を含む樹脂窓の一貫生産を行っている。上海は製造は行わず、主にアルミ商品とアルミ形材断熱を販売している。深は華南地区のマーケット向けにアルミ製品を販売しているほか、押出機が2基あり、上海の商品向け形材を生産している。蘇州は中国国内での販売は行わず、「世界の生産の戦略基地」という位置付で、クレセントや戸車の部品を生産、日本、台湾、米国などAPグループ会社向けに供給している。  海外売上高は08年12月期に500億円を突破、営業利益は15億円前後となった。09年度売上高はリーマンショックの影響と円高により450億円程度で、内訳は米国が08年度比4割減の110億円、中国が140億円、ファサード(海外)が90億円。利益は横ばいの15億円前後で、7ヵ国・地域すべてが黒字化した。
 2010年の計画は売上が2〜3%増とそれほど大きな伸びは見込んでいない。利益は15億円前後と横ばい。米国はまだ立ち直らず、売上は09年並みにとどまる。戸建て住宅向けは徐々に伸びてきたが、商業施設向けは依然下降状態にあり、収益面でも黒字を維持するが、厳しい。中国は内需が戻りつつあり、10%程度の売上増を見込む。ブラジル、台湾は09年が出来すぎたので若干、売上は落ちると見ている。インドネシアは少し伸びる。ファサードは量を追わずに、きちんと利益が出るものだけを手がけるようにしているので、巡航速度にある。
 中計で掲げた2012年度の海外売上高630億円、営業利益率5%という目標は、策定当時の113円から円高が進んでいるが、変えていない。ただ、ボリュームが大きい米国の拠点がいつ復活するかがポイント。他社が苦戦している中で商業施設向けではシェアがじりじりと高まっている。
 中国をはじめ、2012年までは今の設備でキャパは十分で増設増強の計画はない。マーケットがどう変化するか分からないが、拡大よりもそのエリアできちんと利益が出るようにするのが基本。
  海外の新拠点として、インド、マレーシア、ベトナムの3ヵ国を調査しているが、米国や中国でやっているビジネスの形態を根付かせるとなると難易度が高く、結論を出すのに時間がかかりそうである。3ヵ国の中ではマレーシアが先行しよう。新しい拠点も開拓するが、「拙速にしないで慎重に構える」というのが社長の考えである。
 日本向け輸出は深と蘇州の一部が日本に輸出されているが、ファスニング同様、「現地で根付いて、現地で商売する」というのが吉田社長の哲学。建材の場合、固定費が大変なので、立ち上げ時期に多少の応援は止む得ないが、「中国を日本向けの本格的な供給基地にする」考えはない。


アーレスティの高橋社長が経営方針
12年度DC売上高920億円、海外比率4割に
中国、インドに、北米も拡大へ

 アーレスティ(高橋新社長=写真)の10年3月期のダイカスト部門収益は前期28.25億円の赤字から6.08億円に黒字転換した。国内が17.40億円の欠損から0.63億円の黒字転換、海外も8.87億円の損失から6.52億円の利益となり、利益の大半を海外で稼いだ。国内は従業員数(非正社員も含む)を08年11月時点の3,400名から2,700名に削減、労務費で33.85億円、減価償却費減20.4億円が収益改善のプラス要因となった。
 10年3月期設備投資額(金型除く)は60.49億円(国内7.93億円、海外52.56億円)で、09年3月期の119.64億円(国内42.31億円、海外77.33億円)に比べ49.4%減となった。国内は大幅に絞り込んだものの、海外は中国、メキシコなど成長過程の国で高水準の投資を実施した。
 今期の見通しは上期の自動車生産がピーク比80〜85%にまで回復しているのに対し、下期はエコカー減税、各国の消費促進策が終了することで70〜75%の水準に鈍化すると予測。通期のダイカスト部門売上高は国内が591億円、前期比6.6%増、一方、海外は253億円、56.2%増と大幅な伸びを予想。北米が142億円、31.9%増となるほか、その他の中国、インドともに売上げが倍増。海外売上比率は30.0%になる。営業利益も29.5億円のうち、海外が15億円と5割を占める見込み。設備投資(金型除く)は94億円(海外78億円、国内16億円)でインド、メキシコでの増産投資を実施する。
2010〜12年度の新中計経営計画
 最終年度の12年度は連結総売上高1,000億円、営業利益率4%、ROA4%、ROE8%を目標に掲げた。その中で、ダイカスト部門の12年度売上高は920億円で、国内が560億円に対し、海外が360億円と39%を占める。内訳は北米180億円(10年度予想142億円)、中国120億円(83億円)、インド40億円(24億円)と各地域とも大きく伸びると見ている。地域別利益目標は掲げていないものの、国内が2〜3%、海外が10%前後の利益率を見込んでいる。
 グローバル戦略として、ダイカスト部門では@インド、中国、米国市場での販売拡大、A非日系企業顧客への販売拡大B中国第2拠点設立の検討Bメキシコでの金型生産部門の新設などを実施する。
 中計での設備投資額(金型をのぞく)は12年3月期113億円、13年3月期93億円。中国では華中地域での鋳造工場建設を計画、目下FSを実施中で、投資額は今期で約8億円、来期で11億円を見込んでいる。
 15年3月期、16年3月期では海外の売上高比率が約5割になると予想している。


サッシ協会理事長に杉本氏
トステムの潮田会長が表舞台に初登場

 日本サッシ協会は19日、定時総会を開催、2010〜11年度の事業方針を採択するとともに正副理事長など役員を選出した。理事長には杉本正和新日軽社長が選ばれた。同協会の理事長はサッシ大手5社の社長が輪番制で就任するのが原則だが、新日軽の住生活グループ入り後もそれを踏襲した。杉本氏は日本カーテンウォール・防火開口部協会の会長も兼務する。
 杉本理事長は同日の記者会見と懇親会の挨拶で「住宅着工は住宅版エコポイント制度の創設や税制などの支援策の効果が期待されるが、非住宅は依然低迷が予想され、厳しい状況が続く。一方、開口部材には地球温暖化防止・CO2排出量削減25%の一端を担うなど重要な課題が課せられている。窓の断熱性能を明示するなど消費者に分かりやすい活動を展開していく」と抱負を語った。
 注目はトステムの潮田洋一郎会長が副理事長に就任したこと。同会長はサッシ最大手企業のトップでありながらこれまで建材関連団体の役員に就任したことはなかった。これで両協会の正副理事長・会長は原則通りサッシ大手・中小の代表権を持つ社長・会長が揃った。
 心境の変化を問われた潮田副理事長は「建材関連団体の業界活動にはかねてから深い関心を持っていた。ただここ数年住生活グループの体制整備に忙しく、役員になっても役員会を欠席する状況も想定されたので、遠慮していた。サッシ・CW業界は住宅新築着工が低迷し、リフォーム需要が期待せざるを得ないなど大きな変化に直面している。トステムを代表して役員に就任、業界としてそうした変化に適宜対応していく」と述べた。新日軽を住生活グループに取り込み、住宅サッシのシェア50%を制した自信が漲っていた。
 さらにサッシ業界の低収益性を問われて潮田副理事長は「新設住宅着工が103万戸から77.5万戸へ減少したことは、各企業が固定費を30%削減しなければ利益が出ないということだ。そのやり方は流通チャネルの見直し、品種機種の統合、作り方の問題など色々ある。一方、樹脂内窓を付けるだけで冷暖房費を飛躍的に削減できるという調査結果もある。既築住宅は4,500万戸存在し、その窓のリフォームなど新たな市場も生まれている。そうした市場の構造変化に企業として柔軟に対応する必要がある」と解説した。


断熱樹脂内窓の出荷が急増

 住宅版エコポイント制度の導入で需要動向が注目されていた断熱樹脂内窓の出荷が急増している。
 日本サッシ協会がまとめた3月の統計によると、住宅版エコポイントの申請件数は3,690件で、うち3,527件が断熱樹脂内窓のリフォーム工事。窓数では7万4,547窓で、その出荷量は前年同月比3.56倍という。
 また4月の統計では断熱樹脂内窓の出荷は同4.21倍、断熱ガラスのそれは2.36倍という。


日軽金が3ヵ年グループ新中計
12年度売上4300億、経常益200億円
成長4分野売上比45%、海外は19%

 日本軽金属(石山喬社長=写真)は5月14日、 2010〜12年度の「グループ新中期経営計画」を発表した。最終年度の数値目標として売上高4,300億円(10年度予想3,800億円比13.2%増)、営業利益270億円(同160億円比68.8%増)、経常利益200億円(同100億円比2倍)、当期純利益120億円(同55億円比2.2倍)を掲げたほか、有利子負債は3年間で242億円の削減を目指す。
 この目標実現に向けて、以下の基本方針を打ち出した。
@成長分野を攻めるユニットへの資源集中
 「自動車」「電気・電子材料」「情報・通信」「環境・安全・エネルギー」の4市場は今後の成長や新たな用途開発が見込める分野であり、研究開発、設備投資などに重点的に経営資源を投入するとともに、成長戦略を支えるための体制の強化を図る。
 4市場の売上高合計は09年度の1,262億円(構成比27%、新日軽を除くと36%)から12年度に1,895億円(45%)に、営業利益は38億円(49%)から164億円(61%)に拡大させる(次頁・図)。
A業界1ビジネスの強化
 アルミナ・化成品、アルミ箔、トラック架装、パネルシステム、自動車塗料用ペースト、太陽電池関連部材をはじめとする業界トップシェアを有する分野において新製品の拡販、生産性の向上、新たな海外市場の開拓などを通じて、圧倒的な競争力を確立する。
B中国、東南アジアを中心とする海外ビジネスの展開加速
 持続的な成長を続ける中国、東南アジア市場において、パウダー・ペースト、アルミ合金、自動車部品などを中心に海外拠点の能力増強を行うとともに、M&A、アライアンスなどの機動的な活用を含め新規事業進出を積極的に行い、海外ビジネスの拡大を図る。
 海外売上高比率は09年度の11.9%から12年度には19.4%に引き上げる。
 検討拠点は▽日軽エムシーアルミ(アジア第3拠点)▽日軽金アクト(中国第3拠点)▽東洋アルミ(原料粉末製造ライン)▽日本フルハーフ(中国新拠点)▽日軽パネルシステム:(東南アジア新拠点)▽熱交事業部(東南アジア新拠点)。
C要素技術複合化による用途開発と新商品の創出 既存の先端商品・機能にグループ会社が保有する多彩な素材・加工技術を融合・深化させることにより、環境・エネルギー関連市場を中心に新用や新商品を創出。
D財務体質改善と復配
 建材事業売却による資金を成長分野へ投資するとともに、キャッシュフローと収益の管理を徹底し、 2007年度以降の収益悪化で影響を受けた財務体質の再強化を図るとともに、早期復配を実現する。
 設備投資計画は09年度142億円(新製品・製品高度化23億円/省力化・環境他43億円/維持更新76億円)▽10年度203億円(56億円/70億円/77億円)▽11年度243億円(53億円/81億円/109億円)▽12年度217億円(81億円/55億円/81億円)。
 3ヵ年合計で主な設備投資は、@化成品事業部:清水工場原料転換関連60億円A東洋アルミニウム:太陽電池用電極インキ増産27億円/太陽電池用バックシート増産10億円▽日軽パネルシステム:ノンフロンパネル生産ライン10億円▽ニッケイ・サイアム:圧延能力増強8億円。


日軽金の前期経常利益26.8億円
今期17%減収、経常益100億円に

 日本軽金属の10年3月期連結決算は前期比16.9%の減収ながら、経常損益、営業損益はともに196億円改善し、黒字転換した。経常増益196億円の要因別内訳は既存品の販売価格下落20億円、販売数量減117億円の計137億円がマイナス要因。
 一方、プラス要因として固定費削減143億円(労務費100億円、その他43億円)、在庫評価69億円、生産性改善など27億円、購買品価格下落81億円、新製品増販13億円の計333億円が寄与した。
 セグメント別及び主要子会社の収益状況は次頁・表の通り。なお、新日軽の譲渡に伴い、2010年度からは建材事業セグメントを廃止し、同セグメントの理研軽金属工業を板・押出セグメントに移すとともに、関連事業セグメントに分類されていた東洋アルミ関連の「箔・粉末製品セグメント」を新設した。
 今期は前期に比べ営業利益で73億円の増益を見込む。購買品価格変動26億円、固定費増10億円の計36億円のマイナス要因の一方、販売数量増41億円、新製品増販16億円、生産性改善10億円、在庫評価7億円、新日軽除外31億円、既存品販売価格変動4億円の計109億円のプラス要因を見込んでいる。
 なお、製品販売量は▽合金地金(日軽エムシーアルミ)が09年度22.43万d(国内13.97万d/海外8.46万d)、08年度22.55万d(15.09万d/7.46万d)、10年度予想23.1万d(13.75万d/9.35万d)、▽板製品が09年度7.46万d(08年度7.48万d)、10年度予想7.89万d、▽押出製品(日軽金アクト)が09年度3.51万d(08年度3.84万d)、10年度予想3.79万d。


大紀アルミ前3月期営業損2.9億円
今期27.3億円の黒字転換予想

 大紀アルミニウム工業所の2010年3月期連結決算は前期比48.1%の減収の一方、各損益は引き続き欠損ながら赤字幅は縮小。
 半期ベースでは上期の69.0%減収に対し、下期は6.1%減と改善した。経常損益も上期の損失17.85億円から下期は販売数量の回復もあり、11.8億円の利益を計上した。販売数量は連結が26万9,580d、22.0%減、単独が20万4,493d、14.5%減となった。
 今期は57.3%の増収になるとともに、各損益とも黒字転換を見込む。販売数量は連結が35万4,035d、31.3%増、単独が19.2%増の24万3,664dを計画。単独5工場の販売量は次頁・表の通り。
 現在、大型炉は6基(亀山1基、滋賀1基、新城1基、結城2基、白河1基)あるが、新城の1基は09年2月に休止、結城の1基は稼働していない。結城の1基は廃棄するが、新城の1基(月産能力4,000d)は下期に稼働させる計画がある。 ただ、亀山と白河はフル生産だが、滋賀と結城はまだ余力があるため、需要増には2工場の増産と中国の上海シグマ、大正アルミ(デルタ・アルミ)からの輸入で対応する可能性もある。
 大紀アルミが20%出資する大正アルミは現在2期工事を行っており、6月から月産能力は現行4,000dから8,000dに倍増する。
 大紀アルミの取扱量は6,000dになるが、そのうち3,500dは日本へ輸出(現在は2,000〜2,500d)、500dが東南アジア向けなど3国間輸出、残り2,000dは販社である大紀(佛山)経貿有限公司(総経理=安藤準一執行役員東京営業部長)を通じて中国国内で販売する。


住軽金の3月期連結、経常益30億円

 住友軽金属の2010年3月期連結決算は前期比16.1%の減収ながら、営業・経常損益は大幅に改善、黒字転換した。当期純損益は加工品事業再編で21億円、押出品事業再編で62億円、計83億円の損失を計上したことで64億8,000万円の赤字となった。

図・表・写真は本誌でご覧ください。