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NO.2000(2010年9月6日号)
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トステムが完全子会社化
サッシ4社共同出資のコスモ工業
再建に資本一本化、協業体制が崩壊
サッシ大手4社が共同出資する軽量鋼板ドアのコスモ工業をトステムが完全子会社化したことが判明した。主力のマンション用の需要激減により業績が悪化、トステムは再建には資本を一本化した方がベターと判断、他の株主もこれに応じた。
実施日は去る4月1日付。コスモ工業(岩手県一関市東台14-27、社長=大竹俊夫トステム社長)は資本金18億円で、旧株主構成はトステム30%、三協立山アルミ30%(旧三協アルミ20%・旧立山アルミ10%)、新日軽20%、不二サッシ20%。住生活グループは今年4月、新日軽の株式を100%取得し、完全子会社としたことで、コスモ工業における住生活Gの持株比率が50%(トステム30%・新日軽20%)と過半数に達していた。今回、トステムが他の株主3社から残り70%を譲り受け、100%子会社とした。買収金額など詳細は開示されていない。
折からの新設住宅着工の極端な不振からマンション玄関ドア向けを主力とする軽量鋼板ドアの需要が激減。コスモ工業も業績悪化に苦しみ、09年12月に従業員の25%に当たる約80名の希望退職を実施するなど経営再建途上にあった。トステムはマンションの着工動向から放置すれば業績がさらに悪化、抜本的な再建を実施するには資本を一本化し、経営責任を明確化するとともに、意志伝達のスピードアップが不可欠と判断した。
他の株主3社は軽量鋼板ドアの需要不振の長期化やコスモ工業の大幅な業績改善が期待薄なことからトステムの要請に応じたといわれる。マンション用玄関ドアの実需はマンション着工から約1年程度ずれ込むタイムラグがあるため、最悪時の着工が売上に立つ2010年度はさらなる悪化も懸念される模様。他の株主3社はその負担を回避する考えもあったようだ。
サッシ業界は三協アルミと立山アルミが経営統合、不二サッシと文化シヤッターが資本提携、新日軽が住生活G入りするなど目下業界再編が進行中。サッシ大手はかつてコスモ工業を共同設立するなど足並みを揃えた時代もあったが、再編劇の中でそれも崩壊するとともに、商流も大きく変化しつつある。
コスモ工業は1987年10月、大手アルミ建材5社が共同出資する軽量鋼板ドアの生産会社として資本金4億円で設立。当時急激に着工数が伸びていたマンション用の鋼製玄関ドアは三和シヤッター工業が圧倒的に強く、これに日本フネン、文化シヤッター、近畿車輛、輸送機工業、鋼鈑建材などスチール建材系企業が続いた。アルミサッシ各社は当時外注に依存していたが、トステムの潮田健次郎社長(当時)がサッシ大手5社に共同生産会社の設立を呼びかけ、三和への対抗軸としてコスモ工業を設立。ライバル意識の強いサッシ大手が呉越同舟で設立した共同出資会社第1号として当時話題になった。
その後過激な過当競争の中で輸送機工業、鋼鈑建材が自主廃業、関西の名門近畿車輛はコスモ工業グループに加わり、販売会社のコスモ近畿を共同で設立するなど紆余曲折あった。そして近畿車輛が09年に建築用ドア事業から撤退したのに伴い、今年4月にコスモ工業は販売会社のコスモ近畿を吸収統合し、製販一貫体制となった。
本社工場は軽量鋼板ドアの扉本体・枠の加工ライン各1系列を持ち、年産能力は約20万枚で、ピーク時30万枚の2/3。従業員は約250名。総生産の50%をトステム、各20%を新日軽と三協アルミ、10%を不二サッシに供給してきた。また株主だったサッシ大手4社が必要とする軽量鋼板ドアの約60%を同社が供給してきたといわれる。
コスモ工業は4月からトステムの100%子会社となったが、当面旧株主3社に対する供給体制に大きな変化はないという。ただ文化シヤッターと資本提携した不二サッシは、軽量鋼板ドアの調達を文化にシフトする方向を強めつつある。また新日軽との資本提携を意図していた三協立山アルミも、ライバルであるトステムの100%子会社となったコスモ工業に今後長期に全面依存するのは常識的に考えられない話。したがって今後サッシ各社の軽量鋼板ドアの商流は大きく変化する公算が大。なおYKK APは軽量鋼板ドアについて自社生産する。
10暦年上期自動車向けAl出荷
75.78万d、前年同期比70.6%増
経済産業省及び日本アルミニウム協会によると、2010暦年上期の自動車(二輪車を含む)向けアルミ製品出荷量は75万7,804d、前年同期比70.6%増となった。ただ08暦年上期の89万3,276dに比べると84.8%の水準。
6月単月では13万5,406dで、前年同月比34.5%増となった。プラスは8ヵ月連続。
内訳は▽圧延品:2万4,956d(前年同月比46.3%増)▽鋳造品:3万1,764d(34.4%増)▽ダイカスト:7万5,971d(30.8%増)▽鍛造品:2,715d(42.7%増)。
09年度200社売上高ランキング
増収14社、2ケタ減157社
135社で利益1139億円、増益35社
アルミ関連企業200社を対象に行った本誌恒例の「09年度売上高ランキング調査」では増収は14社、横ばい1社、残り185社が減収を記録した。一方、損益面では135社合計で1,139億円の利益で、08年度における205億円の損失から大幅に改善した。
この調査はアルミ業界に比較的関連の深い代表的な企業200社をピックアップし、09年6月期から2010年5月期までの決算期における売上高及び経常利益(一部、営業利益または税引き後利益)を調べたもの。アンケートと電話による取材のほか、本誌が独自にデータを入手した。原則として連結ベースでの業績数値を掲載するとともに、アルミ関連以外でも事業を展開している企業は連結セグメント情報から、よりアルミに関連の深い事業部門の売上高、営業利益を掲載した。
それによると、09年度における200社の売上高を単純に合計すると、8兆7,619億200万円で、08年度の10兆8,361億9,500万円に比べ19.1%減となった。損益はデータが入手できた135社合計で1,139億2,000万円の利益と、08年度の205億300万円の損失から大幅に改善した。
下期以降の需要回復やコストダウン効果が寄与したものだが、リーマンショックの直撃を受けて08年度の企業業績が大きく落ち込んだ反動もある。ちなみに、07年度の本誌調査では売上高が12兆6,026億円、利益が3,247億円。集計対象が異なるため、単純には比較できないが、09年度の利益水準は約3分の1にとどまっている。
200社のうち増収を記録したのは、@元旦ビューティ工業(前年度比増収率18.3%)Aイチタン(17.2%)Bアーレスティ山形(12.5%)C神鋼建材工業(7.5%)D昭和アルミニウム缶(6.7%)E武内プレス工業(5.5%)F理研アルマイト工業(3.3%)G住軽日軽エンジニアリング(2.5%)H富山住友電工(2.2%)Iエムエーパッケージング(1.8%)Jチューオー(1.0%)Kトステムビバ(0.7%)L宮越工芸(0.6%)M下平金属工業所(0.4%)ーの14社。
減収企業185社の減収率別内訳は▽10%未満:28社▽10%以上20%未満:44社▽20%以上30%未満:47社▽30%以上40%未満:37社▽40%以上:29社。157社が2ケタ減となった。
一方、損益のデータがある135社のうち、08年度、09年度ともに黒字で増益となったのは35社、減益が同じく35社。前年度の欠損から黒字に転換したのが25社、黒字から赤字に転落したのが18社。また、赤字ながら赤字幅が縮小したのは14社、反対に拡大したのは8社であった。
ちなみに、増益率の上位15社は、@ユニバーサル製罐(1,906.2%)A尾張精機(784.3%)B山田軽金属製作所(600.0%)C元旦ビューティ工業(533.3%)D住軽日軽エンジニアリング(409.5%)E神鋼建材工業(317.8%)F中央精機(298.7%)G大和製罐(261.1%)H新中央工業(200.0%)I群馬合金(178.9%)J武内プレス工業(167.9%)Kアルミニウム線材(131.1%増)L東洋アルミニウム(122.9%)MACE21(107.5%)Nトステム住宅研究所・アイフルホーム(100.0%)/日本伸管(100.0%)。
トステム、次世代窓「サーモス」
フレームと複層ガラス一体化技術
トステムは18日、業界初のフレームと複層ガラスの一体化技術「スマートシナジーシステム」(特許出願中)を採用した次世代スタンダードウィンドウ「サーモス」を開発したと発表した。ガラスとサッシを組み立てた完成品として販売する。
新技術「スマートシナジーシステム」は(下図参照)は複層ガラスとグレイジングチャンネルを嵌合した「専用グレチャン付き複層ガラス」でフレームと複層ガラスを一体化、窓として強度・性能・品質を保証する。従来の窓と比べてスリムなフォルムが可能になり、複層ガラス中央部の面積を広くできる(「縦すべり出し窓」W640o×H1,170oで約15%アップ)ことで断熱性を向上。また、フレームを細くすることでデザイン性の向上と高い眺望性も実現する。さらに内観は室内側のフレームを隠してしまうフレームイン構造の採用により極限までガラス面積を広くした。
品揃えは高断熱複層ガラスを標準採用したアルミと樹脂の複合タイプ「Hシリーズ」と一般複層ガラス採用のアルミ構造の「Sシリーズ」の2種。断熱性能は「Hシリーズ」で従来のH-3等級から2ランクアップのH-5等級に、「Sシリーズ」の場合、従来のH-2等級から1ランク上のH-3等級に向上する。価格は単体引違い窓(W1,690o×H1,170o)で8万1,690円と、従来品と同価格帯で性能をアップした。「Hシリーズ」が10月から東北地域で先行販売し、11年4月から全国展開。「Sシリーズ」は11年春に発売。シリーズ全体で3年後に年間280万窓の販売が目標。
なお、生産はガラスも含めた完成品としてトステムの国内4工場とタイ工場で行う。当面、新日軽の流通ルートでの販売は行わない。
軽圧品流通市況、東京4品種5円高
全国軽金属商協会・市場調査委員会によると7月末の軽圧品流通市況調査によると、東京地区はアルミ小板、52S板、56S棒、快削棒の4品種が前月末比5円/s上昇。アルミ大板、63S形材の2品種は変らずであった。大阪・中部地区は両市場とも全6品種が10円高となった。
市況高は7〜9月期のNSP地金価格が260円、4〜6月期比10円高となったことの反映。
図・表・写真は本誌でご覧ください。
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