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NO.2206(2015年1月19日号)

和伸工業・和伸商事
金型・ビレット鋳造・押出の一貫体制
Al押出QCDで顧客満足度No.1目指す

和伸工業(吉井裕司社長)は大阪府堺市に本社を置く中堅のアルミ押出メーカー。金型製作からビレット溶解鋳造、押出の一貫設備を保有し、顧客の多様なニーズにきめ細かく対応、CS(顧客満足度)No.1を目指す。

  和伸工業は1950年2月に設立されたアルミ・アルミ合金の形材・管・棒及び鍛造素材を生産する押出専業メーカー。国内の押出業界は板・押出を生産する大 手資本のA団・押出専業のB団・サッシ企業のC団に分類されるが、和伸工業はB団に属し、創業半世紀を生き抜いた老舗・名門として知られる。吉井裕司社長 はその三代目で、「不易流行」を座右の銘、「何事にも必ず突破できる隙間がある」を信条として経営に当る。会社案内のトップには「アルミの製造を通して関 係者から信頼される企業をモットーとし、その基盤は<和>であると信じる」という吉井社長のメッセージが掲載されている。
 「資本金は9,910 万円、従業員は吉井社長以下90名。1965年11月に堺市美原区に押出工場(敷地2万4,963u、建屋1万1,253u)を建設。大阪市中央区に営業 所を置いて特定メーカー向け販売を行う一方、押出材・抽伸材の商事部門として和伸商事を持ち、一般ユーザーへ在庫販売する。
 主要設備は次頁・表 の通りで、1,500d・1,800d・2,000d押出機各1基、計3基を中心に、多様な管材需要に対応するため、50d抽伸機・多本引抽伸機・連続抽 伸機などを保有する。機械設備生産能力は月間1,000dだが、需要が細分化されているので実質月間700d程度がマキシマムという。ちなみに13年(決 算期は12月)は6,870dを生産、14年の計画は7,600dを目標とする。
 同社の最大の特徴は7d反射炉を基盤とする溶解鋳造設備を保有 し、地金溶解・ビレット鋳造・押出・切断までの一貫生産体制を構築すること。押出の寸法精度の決め手となる金型についても、ワイヤーカット放電加工機・自 動精密放電加工機・マシニングセンターなどの設備を保有し、自社生産する。いわゆる押出B団と称される中堅各社はその多くがビレットや金型は外部調達する のが一般的だが、和伸工業はそれらを自社生産する。
 一貫生産体制のメリットは幾つかあるが、Q(クオリティ)・C(コスト)・D(デリバリー) について、顧客の多岐に亘る要望にきめ細かく対応できること。例えば押出材は自動車などの重要保安部品への採用が増えているが、自社鋳造なので合金成分や 添加材などきめ細かくチェックでき、信頼性の高い製品の提供が可能。同時に、リードタイムが短時間で済むので短納期・納期厳守が可。溶解設備を保有するの で工場内で発生するリターン材もそのまま溶解でき、原料の安定調達やコスト低減にも効果が大きい。
 また大手各社の溶解鋳造設備は50〜100d 程度の大型溶解炉が多いのに対して、同社は1チャージ7dと小規模。しかし、ここ数年は付加価値の高い多種多様な合金が求められ、注文も小ロット化が進む など押出材ニーズが変化しているので、小型炉は逆に小回りが利くという利点もあるという。反射炉・溶解炉は合金の種類を変えるごとに炉洗いなどの清浄化作 業が必要だが、小型炉なので比較的簡単に済むメリットもある。
 生産品目は合金の種類で1000番系の純アルミから5000〜7000番系の高力 合金まで多岐に亘る。また押出材は押出形材、押出管、押出棒、抽伸管、抽伸棒、その他と千差万別。主な用途は導電材、フィン材、熱交換器部材、二輪・四輪 車用鍛造素材、車両・航空機部材、カメラ部品、通信機器部材、建材など幅広い。今後ともQCDをベースとして小回りの効くサービスに徹し、CS(顧客満足 度)No.1を目指す。


アルミ関連各団体トップの年頭の辞

新規分野の需要開拓が大命題
 【日本アルミニ ウム協会・石山喬会長】最新の法人企業統計では14年7〜9月期の売上高は前年同期比2.9%増で5四半期連続増、経常利益は7.6%増で11四半期連続 増となり、増税の反動減を経て企業活動は緩やかな回復に向かう。しかし日銀短観では急激な円安・原油安により、業況判断指数は悪化し、先行き予断は許され ない。昨年末の総選挙で与党が勝利して経済最優先策が堅持されるので、経済の好循環につながることを期待する。
 14年4〜9月のアルミ総需要は205万dで4.3%増となり、通期では7年ぶりに400万d超を予測する。うち圧延品も4年ぶりに200万d超が見込まれ、政府の景気対策がアルミ需要に好影響を与えており、更なる伸びが期待される。
  一方、当業界が諸々の課題に直面することも事実。電力料金・エネルギーコストの上昇が続けば国内でのモノづくりは困難になる。またLME倉庫問題は15年 2月から「ロードイン・ロードアウトルール」が適用されることになった。これにより新地金の実需家への供給が円滑に進み、高騰を続けるプレミアムが下がる ことを望む。
 当協会は足元の需要拡大を目指して新たな活動を開始した。第1弾として5月に防災・防犯用のアルミ製品を網羅したPRパンフ 2,300部を作成、全国の自治体防災担当者に送付した。また11月には長寿命・耐震化に優れる橋梁のアルミ化を目的に「橋梁アルミ化検討WG」を発足し た。様々なアイデアや要望を集めてアルミの用途開発を推進、アルミの需要増に資したい。

アルミ屑資源の海外流出を懸念
 【日本アルミニウム合金協会・浜村承三会長】  総選挙の結果、安部内閣が長期安定政権の基盤を獲得したことは当業界にとって歓迎するところだ。新政権がデフレからの脱却を果たし、景気回復を確固たるものとすべく成長戦略を着実に実行することを強く希望する。
  当業界の懸念材料として円安に伴う原材料価格の高止まり、アルミスクラップ資源の海外流出、電力の安定供給への不安、原油急落に端を発する国際経済の変調 などが指摘される。地球環境保全は今や必須かつ喫緊の課題。重要基礎資材のアルミ二次合金の供給とアルミリサイクルの一翼を担う当業界の果たすべき役割と 責任の重要性は揺るぎないものと確信する。

会員目線の協会運営に全力投球
 【軽金属製品協会・山田浩司会長】アベノミクスの恩恵 は産業間・企業間において跛行性があり、その副作用として輸入原材料やエネルギーコストが上昇し、国内のモノづくり企業の収益を圧迫する。表面処理業界に おけるアンケート調査では各種のコスト上昇が引き続き深刻な影響を与えている実態が浮き彫りにされた。
 当協会を取り巻く環境は依然楽観を許さな い状況にあるが、その中会員の目線に立った事業運営を行い、会員企業の役に立つ協会を目指す。特に会員の要望の強い行政に対する政策提案活動に関して、 15年も行政との意見交換の場を積極的に設けていく方針である。若干遅延する当協会のHPの内容改定も新年にはリリースしたい。

高性能・高断熱商品の普及活動急ぐ
 【日本サッシ協会・堀秀充理事長】14年は消費税増税後の需要低迷が長引いて新設住宅着工が減少した他、アルミ地金をはじめ原材料の高騰、建設職人の不足、労務費の上昇など業界環境は非常に厳しいものがあった。
 15 年度は4月から新省エネ基準に1本化されるとともに、住宅性能表示制度も改正される。さらに14年11月に建材トップランナー制度にサッシ・ガラスが追加 されたこともあり、より高性能・高断熱製品が求められるようになった。中長期的に見ると2020年の東京五輪までに国土強靭化策が実施され、同時に省エネ 基準が義務化される。こうした環境の変化に即応すべく、行政当局と緊密に連携しながら対応していく。

創立50周年、二大事業を完遂へ
  【日本シヤッター・ドア協会・岩部金吾会長】  当協会はシャッター・ドアの保守点検制度の創設を目指して活動してきたが、14年6月に建築基準法が一部 改正され、防火設備に関して新たに検査報告制度が創設されることになった。当協会認定の防火シャッター・ドア保守点検専門技術者は現在6,300名を数え るが、新制度の導入に向け資格講習会を拡大開催するなど整備を急ぐ。
 またゲリラ豪雨の防災事業の一環として、浸水防止用設備について、その設置 基準や性能基準などガイドラインの策定も急ぎたい。当協会は14年12月に創立50周年を迎えた。その節目の年に防火設備の検査報告制度と浸水防止用設備 のガイドライン策定に着手することになり、これを新たな時代に向けた二大事業と位置付けたい。

国内回帰で3年ぶり4万dに回復
  【日本マグネシウム協会・加藤数良会長】円安効果で国内製造業に明るさが戻りつつあり、海外移転が続いていた自動車産業、ノートパソコンや携帯電話など携 帯電子機器で生産の国内回帰が実現し始めた。これにより14年の国内Mg総需要は3年ぶりに回復基調となり、前年比10%超増の約4万dが予測される。純 Mgではアルミ合金添加剤・鉄鋼脱硫・ノジュラー鋳鉄・粉末が安定的に推移し、低調だったチタン還元市場も回復が見込まれる。ただ成長を期待するMg合金 は回復基調が鈍く、弱含みで推移するが、通信機器筐体への採用が進むとともに、Mgを電極板に用いる非常用Mg空気電池も市販された。
 一方、海 外に目を転じると14年の世界生産は約100万dになったようだ。依然中国が中心で、中国青海省の塩湖を利用した電解法によるMg製錬工場のほか、イラ ン・豪州・トルコなどでも建設計画が進む。これらは自動車の軽量化の一環として各種部品のMg化を見込んだものだ。当協会は引き続き用途開発と需要促進に 努めるが、アルミ・鉄鋼・チタン産業との連携が重要と考え、15年3月には「Mg地金需要家交流会」を計画する。


アルミ関連企業トップの年頭の辞

4月に新体制、国内はリフォーム中心
  【貝IXILグループ・藤森義明社長CEO】14年はグローエの株式取得などグローバル元年と呼ぶにふさわしい1年だった。一方国内は増税の影響で新築 市場が厳しく、リフォームへのシフトを拡大した。その一環として流通・施工と一体となった提案力を高めるべく、パートナーグロース統括部を新設した。また 社内においては実力主義による公平な企業文化を創造すべくダイバーシティの定着の推進、創造性とエネルギーに満ち溢れた組織形成を進めた。
 15 年は4月からより安定した収益力のある成長を目指し、4つのテクノロジーカンパニーを幹とした新しい事業モデル(軽金属ダイジェストNo.2200に詳 報)に移行する。世界のLIXILグループ全体でより一層のシナジーを発揮し、「グローバル化を加速する」とともに、「世界レベルで優れた人材を活用」 し、「カンパニー間のシナジーにより、LIXILの強みを最大化」するのが狙いだ。
 売上高の多くを占める国内においてはリフォーム事業を一層推 進する。人口減少とストックの余剰によって新築着工は減少するが、少子高齢化、単身世帯の増加、エネルギー・耐震など住環境の変化と住まいへの新しいニー ズがある限りリフォーム需要は増大する。住生活産業のトップランナーとしてリフォーム商品と提案力の強化を図る。

樹脂窓拡販とリノベーション事業強化
  【YKK AP・堀秀充社長】14年は新設住宅着工減、アルミ地金など資材価格の高騰により厳しい環境だった。その結果国内業績が低迷、海外は増収増益だったものの 14年度の連結業績は売上高2%増、営業利益11%減の増収減益(軽金属ダイジェストNo.2202、No.2205に詳報)となろう。13年度にスター トした第4次中計では「商品力・提案力によるAP(建材)事業の持続的成長」を基本方針に掲げ、@窓事業の拡大、Aリフォーム分野の強化、Bビル事業の強 化、Cエクステリア商品力の強化、D海外AP事業の拡大─に取り組むが、それぞれ着実に成果が実りつつある。
 15年度は増税延期や住宅エコポイ ント制の景気対策を期待する。国内では新築・リフォーム分野とも競争力の強化を推進する。すなわち新築市場では断熱性能に優れる樹脂窓を中心とした商品力 の強化により、差別化を図る。リフォーム分野では中古住宅のリノベーション市場に向けた商品・工法を一段と拡大し、「窓から拡がるリフォーム」の基盤を構 築する。
 海外AP事業は既存国の事業深耕と新規進出国の事業基盤づくりに取り組む。停滞する中国では内需拡大を図るべく営業力の強化、製造・供給体制の整備を急ぐ。

省エネ・環境リフォームの提案力強化
  【三協立山・山下清胤社長】14年は増税後の4月以降消費の回復に力強さを欠くなど不透明感の拭えない1年だった。主力の建材事業では新設住宅着工減、原 料アルミ地金の高騰や資材価格上昇など厳しい事業環境だった。15年も個人消費の緩やかな回復など改善が見られるものの、引き続き地金・資材価格の高止ま りなど経営環境は不透明な状況が続こう。
 当社は目下「VISION2020」を基本に「改装・リフォーム事業の強化」・「非建材事業の強化」・ 「海外展開」─3項目を実施する(軽金属ダイジェストNo.2205を参照)。リフォーム分野では学校・医療施設・集合住宅の省エネ・環境リフォームの提 案力を強化する。併せて全国展開のネットワーク「一新助家」加盟店のレベルアップ、EXリフォーム市場の創出を行う。非建材のうちマテリアル事業は14年 に子会社化した三協サーモテックなどとのシナジー効果の追求を、商業施設事業ではコンビニ・ドラッグストア向けなどにトータル提案の強化を急ぐ。
 海外展開は2020年5月期で売上高比率10%を目標とする。中長期的に成長が見込めるタイなどアジア市場の拠点整備に加え、欧米での取り組みを強化する。

中計目標は1年前倒し14年度に達成
  【三和ホールディングス・高山俊隆会長CEO】 14年の国内経済は個人消費や住宅着工が低迷し、弱含みで推移した。米国は住宅・非住宅とも安定的に堅調 だったが、欧州は本格的な回復には至らず、アジアは中国が不安定のままの状態が続き、今後の推移を注視する必要がある。14年は「三和グローバルビジョ ン」の第1次中計の中間年だったが、国内は多品種化の拡大において防水商品や間仕切りなどで顧客要望に迅速に応える商品開発に努めた。また米国では住宅新 築市場向け販売強化を図るとともに、開閉機事業のシェアアップを図り、欧州ではコスト削減に注力、中国を含むアジア事業では基盤整備と拡販に注力した。
 15年は中計最終年度だが、中計数値目標は1年前倒しで14年度に達成する。さらに高みを目指し、「動く建材のグローバルメジャー」に向けた取り組みを強化する。

顧客を第一に地域No.1の販工店へ
  【三和シヤッター工業・長野敏文社長】14年は個人消費や住宅着工は低迷したが、マンションや工場・物流施設など非住宅は総じて堅調に推移した。そのなか 多品種化の定着を目指し、成長商品と位置付けた間仕切り・環境建材・エントランス廻りの3商品群を業界トップレベルの基幹商品に育成すべく、マーケット・ 商品・用途を細分化して品揃えする「細分化戦略」を展開した。
 15年度は業界トップレベルの製造技術力・商品開発力・工務力を確立し、顧客との 密接な関わりを大切にする地域No.1の販工店を目指すとともに、三和グループ全体の牽引役の責任を果したい。復興需要や東京五輪関連のインフラ整備など プラス材料もあるが、資材高や建設労働者不足、中国・韓国経済の減速懸念など内外の経営環境は不透明といってよい。顧客視点に立った「ものづくり」に拘 り、進化と成長を続ける企業を目指す。

創立60周年、革新的新商品を創出
 【文化シヤッター・茂木哲哉社長】業界を取り巻く環境 は震災復興、都心再開発PJ、東京五輪に向けた施設の新設やリニューアルなど明るい材料の反面、原材料価格高騰など内需を冷え込ませる懸念材料も残る。 15年は生活者の視点で問題を解決する「ことづくり」をコンセプトに革新的な新商品の創出や未知分野への展開など、社会的課題の解決に向けてイノベーショ ンを起こす。
 その中で止水事業では国交省が推進する浸水防止対策方針に沿って商品力の拡大を急ぐ。例えば14年7月発売の「アクア―ド」は浸水 時に動力源を守れるので市場の反響が大きい。アジアを内需として捉えて注力する海外展開は、ベトナム子会社の経営が軌道に乗った。今後東南アジアで建設が 進む空港・港湾施設・大型商業施設向け受注も順調に推移し、さらなる成長を見込む。
 15年は当社設立60周年の節目の年に当る。これもステークホルダーの力添えの賜物として感謝する。今後さらなる飛躍を目指したい。

顧客ニーズや市場変化に素早く対応
  【不二サッシ・土屋英久社長】当社グループは2020年に創立90周年を迎えるが、創立100周年を視野に入れた長期ビジョンを念頭に第1次〜第3次の中 計を推進する。すなわち14年4月から始まった第2次中計「PROGRESS・躍進」は、事業構造改革を継続しつつ、市場・商品技術・人材育成に積極的に 挑戦、次代に向けて持続的発展のための基礎作りに取組んでいる。
 15年は第2次中計の2年目に当る軸の年。主力のビルサッシ事業では基幹商品の 切り替え・商品開発力の強化・循環型社会に向けた新たな商品提案などに注力する。すなわちフロント事業・リニューアル事業・環境事業・LED事業・海外事 業の推進などにスピード感を持って顧客ニーズや市場変化に大胆に対応し、そのために必要なイノベーションを積極的に進めていく。


丸紅が世界のアルミ新地金需給予測
15年38万d・16年87万dの過剰
LME市況15年末で2,100ドルに上昇

  丸紅・軽金属部地金課は14年末、恒例となったアルミ新地金の世界の需給予測とLME市況見通しを発表した。それによると世界の需給の約1/2を占める中 国において、需要が堅調に伸びる半面、高コスト製錬工場の閉鎖などで供給の伸び率が大きく鈍化することから、世界需給は15年で38.7万d、16年で 87.2万dの供給不足になるという。よってLME在庫が減少するなど需給がタイト化し、LME市況の中心値は14年7〜9月のd1,995ドルから15 年年末には2,100ドルに上昇すると見ている。対日長契プレミアムも400〜410ドルから400〜450ドルにアップする。
 この予測では上 げ幅は小幅だが、14年1〜3月の中心値1,748ドル、プレミアム255〜257ドルに比べると中心値で352ドル・20%の、プレミアムで169ド ル・66%の大幅上昇となる。アルミ圧延・建材各社はこの原料価格高騰に対して、ロールマージンアップを含め15年年初から製品価格への転嫁を急ぐ。その 浸透が国内のアルミ業界の15年における大きな課題となる。
 【世界の新地金の需要見通し】詳細は表Aの通りで、14年5,393.0万dで 7.3%増、15年5,696.8万dで5.6%増、16年6,019.1万dで5.7%増と堅調に推移する。世界需要の51%を占める中国は経済成長の 鈍化に伴って伸び率が14年11.7%増、15年8.2%、16年7.1%と低下するものの、依然として牽引役を堅持する。
 注目されるのは経済回復が顕著な北米の伸び率で、14年4.6%増、15年5.1%増、16年5.4%増と好調に推移する。日本は14年こそ消費税増税の駆け込み需要で7.7%増と伸びたが、15年1.7%増、16年1.9%増と平準化する見通し。
 【世界のアルミ地金の供給見通し】詳細は表Bの通りで、14年5,380.4万dで6.4%増、15年5,658.1万dで5.2%増、16年5,932.0万dで4.8%増と伸び率は年を追って低下する。
  その要因は@14年は欧米・ブラジル・中国・ロシアの製錬所がコスト高により相次ぎ減産を発表、15年も減産継続の可能性が高い、A世界供給の52%を占 める中国は西北部での生産拡大によって足元の生産は拡大するが、西南地区はコスト上昇に伴い減産リスクがある、B中国を除くインドなどアジアや中近東・ロ シアで16年まで増産が見込まれるが、供給不足は補えない─など。
 【世界のアルミ地金の需給バランス】上記の需要と供給見通しにより、需給バラ ンスは14年12.5万d、15年38.7万d、16年87.2万dの供給不足を予想する。新地金市場の1/2超を制する中国は14年89.4万d、15 年71.9万d、16年0.5万dの供給過剰の見通し。したがって中国を除く世界の需給バランスは14年101.9万d、15年110.6万d、16年 87.7万dの供給不足が見込まれる。
 【LMEのアルミ新地金相場の見通し】詳細は表Cの通りで、需給バランスが供給不足となる予想から14年 以降タイト感が強まり、相場は上昇気配となろう。ちなみに需給が緩んでいた14年1〜3月に比べると新地金相場は約20%、プレミアムは60%超の大幅値 上がりを示現する。相場上昇はその後も続き16年は中心値2,150ドル、プレミアム350〜450ドルまで上昇する見通し。

【解説】大手商社は年初から春先にかけてそれぞれ世界のアルミ新地金需給見通しを公表するが、1番手に立つのは例年通り丸紅。巷間ではアルミ地金市況の高騰を懸念する声が強いが、ドルベースではそれほど大きな値上がりはないようだ。問題は急激な円安による市況アップだ。



図・表・写真は本誌でご覧ください。